通夜振る舞いでの出来事

通夜振る舞いでの出来事

祖父の通夜でのことです。

弔問客が予想より多かったのは、祖父が短歌の先生をしていたからでした。
生徒さんが大勢弔問にいらっしゃってくれたのです。

先生をしていたと言っても、教室があったわけではなく、お金をいただいていたわけでもなく、通常は電話で添削を行ったりアドバイスをしており、生徒さんたちと顔を合わせるのは、数ヶ月に一度だけ、というスタイルで行っていた様でした。

その為、どのぐらいの方がお見えになるのか、家族は見当もつかなかったのです。
予想を超える方々への通夜振る舞いを行うことになった家族は大慌てでした。嬉しいことです。

生徒さんは超ご年配の方々ばかりでしたが、そこは歌を嗜む方々です。紳士淑女の集まりでした。

私も、弔問のお礼にと、飲み物をもってテーブルに挨拶に伺っていました。
そして、あるお婆さんのところで、しばし引き止められたのです。

お婆さんはおもむろに一冊の古い本を出し、私にくれるというのです。
その本は、祖父がその昔に自費出版で出した歌集だそうで、初めて見るものでした。

そのなかに私を詠うものがいくつかあると言うのです。
幾つかその歌をご紹介いただいたうえで、
「このお孫さんに会えたら、この本を差し上げようと思って持ってきたんです。」
と言っていただきました。

もちろん、孫は他にもいますが明らかに私のことを詠んだ歌でした。
私は大変な祖父っ子だったのです。

祖父は、私の自慢話のようなこともよく言っていたそうで、
近所の相撲大会で優勝したことや、戸袋に頭をぶつけて大怪我したことや、一緒に旅をしたことなどを、その方も覚えてくれていたそうで、一目で私だと分かったと言うのです。

その後も、祖父のことをゆっくり色々と聞かせてくれました。
なにやら本当にありがたいことでした。

通夜振る舞いがお開きとなり、弔問の方々がお帰りになった後に、家族にその本を見せてみました。
すると、誰もその本の存在を知らないというのです。
生徒さんに配っているうちに無くなってしまったのでしょうが・・・

私は心得がないので歌を見ても何が書いてあるのかよく分かりませんが、私の母と叔母二人(祖父の三人娘)は、しばしその本の歌を見ながら思いにふけっておりました。

感謝です。

■ 横浜、川崎の家族葬
       
       
       
       
       
       
       

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